フォークで刺した地球を

僕らは、ワンルームの蛍光灯の下で。

目黒川

今年もちゃんと、桜を見てきた。東京、大人の街。とても綺麗で、全てがどうでもよくなった。桜が誰にだって平等であるなら、それぞれに不都合が出てくる。

親友たちと並んで歩く。スパークリングワイン、ホットチョコレート、ブランデー。去年のことを思い出して泣きそうになった、真っ赤な顔してにやついていた。まだ消えちゃいないな、消えてくれやしないな。

さよならしたあとは、花見をしている人たちを眺めていた。ビルの2階、LINEの画面と白い花、お酒の匂いと電車の通過音。夜だ。あたたかな夜だった。出来るのならば、楽しくてあいまいな記憶だけに酔っていたい。

ハッピーエンドが不要な世界の、横断歩道の白線を行く。

ギブアンドテイク

心がすっきりしない日が増えてきた。テレビの画面の中の可愛い女の子が悩みを話している。頑張っているのを非難するのって嫌いだ。もやもやする。あえて言葉にしない気持ちとか、中途半端な優しさも全部食い散らかしてやりたい。暴君。

私は自分に自信がありません。だからオススメは出来ません。これでは誰も手を伸ばしてくれません。つまりはそういうことです。

努力を続けていれば、結果は必ず出てくれると言われた。日記や詩を書くことも、夜に走ったりすることも、生きることを辞めないこともいつかの私が褒めてくれる。そう信じることしかできないけど、それがきっと正しい。

 

最終コーナーは曲がるな

久しぶりの夜。家のドアを開けた瞬間に春を感じた。もう寒くはなかったから、浮かれながら悲しくなった。また壊れてしまわないようにゆっくり歩く。でも我慢できなくて2曲目のイントロと同時に駆け出してしまった。思ったよりも身体は軽くて、いつもと変わらないトンネル、駅前、自転車置き場、ファミリーマート。胸が苦しくなったのは、いつものゴールの手前。でも、もう少しの乱用をして走った。よくする癖、汗がにじんで服が重たい、小学校の前、横、横断歩道、ラスサビの直前、死にそうな顔を笑いながら走った。最終コーナー。

予想してなかったから、本当は期待していなかったから。でも、桜が咲いていたから、足が止まった。桜なんかに、足を止められてしまった。

耳の外の音楽、少し色が褪せたみたいな、あの時の香りはしない、ニュースがノイズみたいだった。思い出した記憶も、まだ美化しきれてない笑顔もいじわるな顔も、白く映る花のような、変えられなかった偏見も。全部蘇った。まだ、ここに私は一人。ここには私だけが一人、いた。

去年の東京を思い出しながら、月を見上げながら帰った。私は、私のあった場所に戻ってきてしまったんだ。