フォークで刺した地球を

僕らは、ワンルームの蛍光灯の下で。

最終コーナーは曲がるな

久しぶりの夜。家のドアを開けた瞬間に春を感じた。もう寒くはなかったから、浮かれながら悲しくなった。また壊れてしまわないようにゆっくり歩く。でも我慢できなくて2曲目のイントロと同時に駆け出してしまった。思ったよりも身体は軽くて、いつもと変わらないトンネル、駅前、自転車置き場、ファミリーマート。胸が苦しくなったのは、いつものゴールの手前。でも、もう少しの乱用をして走った。よくする癖、汗がにじんで服が重たい、小学校の前、横、横断歩道、ラスサビの直前、死にそうな顔を笑いながら走った。最終コーナー。

予想してなかったから、本当は期待していなかったから。でも、桜が咲いていたから、足が止まった。桜なんかに、足を止められてしまった。

耳の外の音楽、少し色が褪せたみたいな、あの時の香りはしない、ニュースがノイズみたいだった。思い出した記憶も、まだ美化しきれてない笑顔もいじわるな顔も、白く映る花のような、変えられなかった偏見も。全部蘇った。まだ、ここに私は一人。ここには私だけが一人、いた。

去年の東京を思い出しながら、月を見上げながら帰った。私は、私のあった場所に戻ってきてしまったんだ。