うそつき
大きな街灯の下なら、見つからない気がした。嘘、本当は見つけてほしい。
満月の周りだけ透明にキラキラ光る、雲が流れていくのを眺めていたらあと少しで車にひかれそうになった。
木と葉っぱのトンネルを歩いていく、私の住む町から少し遠くまで来ると自由になった気がして心から笑えてくるんだ。
エレクトロニカしか聞けない夜もある。昨日はそんな日だった。
人を見るのは大好きだし、きっとその癖のせいで自分に呪いをかけ続けたままなんだ。
もう結構な大人なのに、みっともないなと思ってしまうことばかりだよ。
私はまだ自分を子どもだと信じていて、年だけ食ってしまったんだ、きっと。君もそうでしょ?
全部間違いだったよ、あのときの言葉とか笑顔とか頷いたことも教えたことも全部全部間違いだったよ。
でもそうすることしかできなかったんだよ。全部そうだ。思い通りにいかないってことだけが正しいんだ。
だから私は自分が嫌いだ。この身体から逃げ出したい。髪を切りたい。軽くなりたい。遠くへいきたい。
遠くへ。
最終列車
髪を染めたことがない。きっと似合わないし、私には黒髪が一番落ちつくんだと信じている。制服のスカートもそんなに短くしなかった。第一印象と全然違うねってよく言われて、きっと私の見た目は本物じゃないんだなと小さいころから思い続けていた。
爪を切った後にやすりにかける行為が苦手で、腕や足に白い線が増える。結婚線の話で盛り上がったり、マクドナルドの新メニューで一喜一憂したり、あの頃は世界がとても小さかった。だから不幸でも我慢できた。
「大人になればわかるけど、僕らはなんにでもなれるし、なんだってできる」
そういってくれた人のことをたまに思い出すの。数少ないソウルメイト。きっと今頃奥さんと仲良くしてる。あの人みたくなりたいけど、私には夢がない。
スマホをちらちら見てため息をつく。こんな四角形に縛られていることに気づいて笑えてくる。地球は丸いらしいじゃないか。私だってまるくありたい。月も太陽も丸くて、きっと一日だってまるい。24時間に飼い殺されている気分はどうですか。23になっても嫌いな物は嫌いなままだよ。
帰るべき場所があって、私は東京にいられなかった。急行電車、酒臭いおじさんにつぶされながら窓の外見て笑った。君の笑い方真似して、意地悪そうな顔して笑った。
潜水
毒を抜かないといけない、私にたまった膿を出さないといけない。刺して、つぶして、軽くなることだけが正義みたいなこの世なんてなくなればいいのだ。まず最初に私が。
空を切れたら半分くらい君にあげる。雨が降りそうで少し悲しくなった。夏が終わっていくことが恐怖でしかないよ。変わるものが怖くて外に出られなくなりそうだ。またあの時みたくなるというのか。不幸になりたいのか、不幸にはずっと慣れないままだ。
もう少しだけ一緒にいたいと泣いていたときもあったのに、今じゃ笑顔でさよならできる。そんな大人になった自分をあざわらってほしいと思うし、涙がいつだって正義なわけじゃない。
壊れたゲームひたすら叩いて笑う。過去も全部思い通りに行かなくなる前に燃やすしかない。自分が認識できなくなればそれはなくなったと同義だ。
私を選ばないで彼女を選んだこと、当たり前なんだけど悔しくて泣くよ。そんな自分が醜くて泣くよ。泣いてばかりで目が腫れたらもっと救われないから、月が消える前に潜れ。