時間が止まる
夜は短いなんて嘘に決まってる。だいだい色の明かりと、断片だけ選んだ春の嘘と、桜の花びらのじゅうたんと、くすんだ雨の匂い。新しい朝なんてもう何年も見ていない気がするよ。視力が落ちちゃったの。
それらしい理由をつけた話を信じちゃって、地下鉄の入り口の階段前。ずっと、待ってるよ。風が染みる。渋谷の匂いにも慣れてしまったよねって、バスを待ちながら笑った。ステンドガラス、暗いトンネルの向こう、静かな街。東京。
君らしい本音がとても居心地が良くて、それを断るのに随分と勇気が必要だった。適当なフリをするんだ、さよならはまだここじゃ似合わない。またね、が呪いのように聞こえて、ほっとした私はゆっくりと目を閉じた。