呼吸
乗りたい電車があったから、たくさん走った。
新宿、赤信号。車がいないのを確認して、急いで渡る。
悪いことしちゃった、でもそんなこと考えてる場合じゃないの。
家族が、私を待ってる。そんな理由で走る。息が苦しい。
子供の頃は、軽い喘息で走れない時期が長くあった。
中学生の時にようやく病院にいって、お薬をもらったら途端私よりもみんなが驚いてた。
だって誰もが嫌がる外周を誰よりも長く走っていたのだから。
嬉しかった、苦しくても、走れることが。
息を吸って吐いて、胸が詰まる。汗が垂れる。私は走れる。私は走れる!
横たわって雑に呼吸をする。苦しくて、でも生きていた。
私は、生き始めたんだと思った。