意地悪そうに笑う君の目が好きだった。春の夜。頬っぺたをつねられながら私も笑っていた。
どうしても普通にはなれなくて、それでも私は普通であると教えてくれた日を思い出しては三日月が滲んで消えていく。電線と視線で二等分されて、隣町へ消えていく。甘くないコーヒーを私は飲めない。一人じゃヘルメットもつけられない。ヒーローがいなきゃ世界は救えない。君が私を作った。いつだってそう思っているよ。
彼の良さは彼女だけにわかればいいというのだから、君の全ても私だけが知っていられたらよかった。桜の花びらが地面に這いつくばるみたいに、もう戻らない昨日にさようならをした。