落下傘と高架線
新しい手帳を黒く染めた、大事なところは赤く染めた。
どんなことが起きたって、
踊っていられるくらいの心を保ちたかった。
深夜の息をしていない街に出る。
横断歩道の赤、寂れた看板の白、私の大好きな黒。
猫に引っかかれた跡の手、高架下。
青くなれたら、曖昧な嘘で誤魔化せたら、
あの夜は、過去の私よりもずっと自由だった。
繋がれた右手は、なんて形容されたら幸せになるのとか
もう考えてもしかたない、言葉にしたら終わってしまう。
私のしていることは自傷行為まがいで
きっと君を作りだすことが怖くて仕方ないんだ。
泣いて、泣いて、それが自由であったといつか理解して、
遠くなる自動車の音、朝が迫ってくる匂い、
まだ夜であることを確認した両目、両手、
それはまるで、
胸が透明に染められていくようだった。